大阪地方裁判所 昭和43年(行ウ)882号 判決 1974年10月23日
芦屋市山手町六四番地
原告
(亡木村権右衛門訴訟承継人)
木村きみ
同所同番地
原告
(同) 木村雅信
右原告ら訴訟代理人弁護士
田辺光夫
同
北尻得五郎
同
松本晶行
同
山口一男
同訴訟復代理人弁護士
中村康彦
大阪市生野区猪飼野中八丁目七番地
被告
生野税務署長
安藤敏郎
右指定代理人検事
井上郁夫
同訟務専門職
吉川宣雄
同大蔵事務官
岡本実
同
鈴木淑夫
同
井上政之
右当事者間の重加算税賦課処分取消請求事件について、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
原告らの請求を棄却する。
訴訟費用は原告らの負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 原告ら
1 被告が昭和四一年五月二〇日付で亡木村権右衛門の昭和三九年分所得税についてした九七四六万六〇〇〇円の重加算税の賦課処分のうち、総所得金額三二四二万八八六八円を基礎として算出した税額を超える部分を取消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決
二 被告
主文同旨の判決
第二当事者の主張
一 請求原因
1 亡木村権右衛門(以下、亡権右衛門という)は、昭和四一年五月一八日、昭和三九年分所得税について総所得金額を四億六三五五万三〇五一円として修正申告(修正増差所得額四億三八二九万八八四七円)をしたところ、被告は、同月二〇日、右修正申告にかかる増差所得に対し、九七四七万六〇〇〇円の重加算税の賦課決定をなし、そのころこれを亡権右衛門に通知した。
2 そこで亡権右衛門は、昭和四一年六月一五日、被告に対し、右賦課税額のうち一五九万九八六一円を超える部分の取消しを求める旨の異議申立をしたが、右異議申立は国税通則法(昭和四五年法律第八号による改正前のもの)第八〇条第一項第二号により、同月二九日大阪国税局長に対する審査請求とみなされ、同局長は昭和四三年九月一七日付でこれを棄却する旨の裁決をなし、同月一八日その旨亡権右衛門に通知した。
3 しかし、右重加算税のうち総所得金額三二四二万八八六八円を基礎として算出した税額を超える部分は、亡権右衛門所有の大阪市大正区南恩加島町所在の土地約五万坪(以下、本件土地という)の所有名義を木村商事株式会社(以下、訴外会社という)に移転したことについての譲渡所得に対する所得税に附帯して賦課されたものである(以下右部分の賦課を本件賦課処分という)が、本件賦課処分には次のような違法がある。
(1) 本件土地は、昭和三二年五月二〇日、亡権右衛門から訴外会社に譲渡されたものである。そして当時本件土地の現況は農地でなかつたが、公簿上の地目が農地であつたところから、大阪府知事の許可がなければ所有権移転の効力が生じないものとして、訴外会社は本件土地を会社資産として受入処理をしなかつた。また、亡権右衛門もその後重病(脳溢血)に罹り、右売買に伴う契約書等の関係書類の作成のないまま時日を経過したが、昭和三九年に至りようやく右売買に伴う関係書類を作成する運びとなり、前記昭和三二年五月二〇日の売買の実態に沿う契約書等関係書類を作成整備し、昭和三九年六月二三日付で不動産売買公正証書を作成したものである。
以上のとおり、本件土地は昭和三二年五月二〇日に売買されたものであり、右譲渡によつて生じた所得は昭和三九年分所得税の課税対象にはならないから、これに附帯してなされた本件賦課処分は違法である。
(2) 仮に前項の主張が認められないとすれば、亡権右衛門と訴外会社との間で昭和三九年六月二三日付で本件土地の売買に関する公正証書が作成されたのは、当時、未だ解決をみていなかつた本件土地にまつわる亡権右衛門と小作人らとの間の紛争に対処すべく、形式上その所有名義を亡権右衛門から訴外会社に移すこととしたことによるものであつて、両当事者とも売買についての効果意思を全く欠き、右時点では本件土地の所有権は未だ訴外会社に移転していなかつたものである(ちなみに、本件土地か実際に訴外会社に譲渡されたのは、後記のとおり、昭和四一年中のことである)。
右のような形式上の所有権移転によつて譲渡所得は生ぜず、従つて所得税を課されるいわれはないから、右所得税に附帯する本件賦課処分は課税の根拠を欠き違法である。
(3) ところで、昭和三九年六月二三日付公正証書による所有名義変更の実情が(2)に記載したとおりであるにもかかわらず、亡権右衛門が1項記載の修正申告をしたのは次のような事情によるものである。
すなわち、昭和四〇年六月ごろ、訴外会社が大阪国税局査察官の調査を受けた際、本件土地につきその所有名義を亡権右衛門から訴外会社に移転したことについて、所得税の課税原因である譲渡所得発生の疑いがあると指摘されたので、亡権右衛門において右名義移転の経緯とその実態につき(2)記載のとおり説明し、課税対象とならないものである旨を申し入れたところ、調査官は亡権右衛門の右申入を了承した。ところが、翌四一年三月一八日、査察官から再び右の課税問題が蒸し返されたので、原告木村雅信及び訴外会社従業員西村伊三郎は、亡権右衛門にかわつて、査察官に対し、前記説明を繰り返すとともに、もし、右公正証書上の形式のみの名義移転が譲渡所得発生の疑義を残すのであれば、即時、右公正証書の記載内容を撤回し、名実ともに亡権右衛門の所有名義に復することにする旨申し入れたところ、査察官から、所有名義を訴外会社に移転し、亡権右衛門の譲渡所得として所得税の修正申告をした方が将来の税対策上有利であること、また、亡権右衛門が右所得税の修正申告をし、訴外会社がこれに対応して本件土地受入の帳簿処理をするときは、右修正申告について重加算税を課さない、との勧奨並びに示唆を受け、これによつて亡権右衛門は本件土地を訴外会社へ譲渡すべく決意し、訴外会社もこれを譲受けることに決し、かくて右譲渡所得は昭和四一年中に発生することになつたのであるが、亡権右衛門は前述の査察官の重加算税不徴収の確約のもとに、その指示に従い課税年度を昭和三九年に遡及させて修正申告をしたのである。
亡権右衛門のした本件土地の譲渡に係る所得税の修正申告の経緯は右のとおりであつて、亡権右衛門につき右申告に係る譲渡所得について重加算税の課税要件である仮装又は隠ぺいの事実は毫末も存しない。
よつて本件賦課処分は、国税通則法第六八条の課税要件を充足しない違法のものである。
(4) 修正申告書提出の経緯が右のとおりであるのに、被告は修正申告を受理するや否やたちまち掌をかえして重加算税を賦課してきた。これは、甘言を弄して亡権右衛門に虚偽の申告を勧奨し、その結果なされた修正申告に対し不意打ち課税を浴せたもので、甚しく公正を欠き信義に反する行政処分というべく、この点においても本件賦課処分は取り消されるべきである。
(5) 現行重加算税は、基礎税額の三〇パーセントにあたりその負担の苛酷なこと、更に「故意」を課税要件の一つとしていること等からみて、税の名を籍りた事実上の刑罰に外ならない。このことから、納税者は各税法に別に定められている刑罰規定との関係上二重処罰の危険にさらされており、重加算税を認めた国税通則法第六八条の規定は憲法第三九条の規定に違反する。
従つて右違憲の規定に基づいてなされた本件賦課処分は違法である。
4 よつて本件賦課処分の取消を求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1、2は認める。
2 同3の(1)は本件土地の現況、公簿上の地目を除き否認する。
3 同3の(2)のうち、本件土地にまつわる亡権右衛門と小作人等との間の紛争については不知、その余の事実は否認する。
4 同3の(3)のうち、昭和四〇年六月ごろ、大阪国税局査察官が調査を行つた際、所得税の課税原因である譲渡所得発生の疑いがあると指摘した事実は認めるが、その余の事実は否認する。
5 同3の(4)は否認する。
6 同3の(5)は争う。
三 被告の主張
1 亡権右衛門は、昭和四〇年三月一五日、別紙第一表の「確定申告額」欄記載のとおり昭和三九年分所得税の確定申告書を提出した。その後大阪国税局収税官吏により、亡権右衛門らに対する所得税法違反嫌疑事件として国税犯則取締法に基づく調査が行われたところ、亡権右衛門は昭和四一年五月一八日に至り別紙第一表の「修正申告額」欄記載のとおりの修正申告書を提出するに至り、亡権右衛門の所得税額は最終的に確定した。
2 被告は、亡権右衛門の提出した前記確定申告書及び修正申告書並びに国税犯則取締法に基づく調査事績等を詳細に検討したところ、亡権右衛門の提出した確定申告書は、修正申告書記載の課税標準及び所得税額計算の基礎となつた事実のうち一部を隠ぺい又は仮装して所得額及び税額を計算していることが明らかになつたので、昭和四一年五月二〇日、亡権右衛門に対して国税通則法第六八条第一項により、別紙第二表のとおりの重加算税の賦課処分に及んだものである。
3 右重加算税賦課処分の対象となつた所得のうち、譲渡所得四億三五一六万七三四五円(昭和四〇年法律第三三号による改正前の所得税法(以下、旧所得税法という)第九条第一項本文の調整を行つた後のもの)は、本件土地の譲渡所得及びその他の土地・建物の譲渡所得の一部から成るものであるが、そのうち、本件土地の譲渡所得の隠ぺい・仮装の実態は次のとおりである。
亡権右衛門は、昭和三九年六月ごろ、同人が所得していた本件土地を、同人が取締役会長として主宰し、同人及びその家族の所有する土地・家屋等の管理運営を主たる目的とする訴外会社に対して譲渡するにあたり、当該譲渡が昭和三二年五月二〇日に行われたかのように私書証書である同日付不動産売買契約書を作成し、更に当該不動産売買契約書が記載年月日に作成されたように仮装するため、訴外会社の取締役会議事録・申入書・示談書等を事実に反して作成したうえで、前記私書証書に基づき昭和三九年六月二三日付で不動産売買公正証書を作成した。
かくして昭和三二年当時の低い価格で売買が行われたかのように仮装することにより、譲渡所得を構成する昭和三二年五月より昭和三九年六月までの当該土地の値上り益を圧縮し、譲渡所得を巧みに隠ぺいしただけでなく、確定申告にあたり本件土地の譲渡により生じた譲渡所得八億六二二四万八三六七円(総所得に算入されるのは四億三一一二万四一八三円)全額を故意に除外して確定申告書を提出したものである。
4 国税通則法第六八条にいう重加算税は、納税者の行うべき申告及び納付義務の履行について、それらの義務が適正に履行されない場合にこれをもつてそれらの義務を間接的に強制することにより、租税債権の適正な確定ないし履行を担保するとともに、申告納税の実をあけ、負担の公平を保持することを企図する制度であり、その額の計算の基礎となる税額の属する税目の国税として、租税の形式により賦課されるものであつて、詐欺その他不正の行為により所得税を免れた場合等にその違反者に科せられる旧所得税法第六九条等の刑罰とは、その性質を異にするものと解すべきである。
すなわち、右所得税法第六九条等の通脱犯に対する刑罰が、脱税者の不正行為の反社会性ないし反道徳性に着目し、これに対する制裁として科せられるものであるのに対し、国税通則法第六八条の重加算税は、課税要件事実を隠ぺい又は仮装した結果として申告又は納付義務を正しく履行しなかつたという客観的事実があれば、その事実に対して正当な理由がない限り課せられるものであつて、それによつて、過少申告又は無申告等による納税義務違反の発生を防止して、所得税法の基幹をなす申告納税制度を維持確保しようという、行政自体に許容される範囲内での秩序維持的ないし租税債権債務関係に基づく違約損害金的な行政上の措置である。これらのことは、法が重加算税を行政機関の行政手続によつて、租税の形式により課すべきものとしたこと自体、これを刑罰として科する趣旨でないことを示しているものと解される。
憲法第三九条は、本来刑事手続について一事不再理の原則を確認したものであるが、重加算税のかような性質よりみて、同条の規定は、刑罰たる罰金等と行政上の負担である重加算税とを併科することを禁止する趣旨を含むものであるとは解されない。
四 被告の主張に対する認否
1 被告の主張1は認める。ただし、修正申告は、原告らの前記主張のとおり、被告の強い誘引に基づいてなされたものである。
2 同2、3のうち、本件土地の譲渡所得について隠ぺい又は仮装した事実は否認し、その余は認める。なお、本件土地が、仮に昭和三九年に譲渡されたものとした場合に、それにより生ずる譲渡所得が被告主張のとおりであることは認める。
第三証拠
一 原告ら
1 甲第一号証、第二号証の一、同号証の二の一・二、同号証の三、第四ないし第九号証を提出
2 証人西村伊三郎の証言を援用
3 乙第一五号証の一・二、第一六号証の成立は不知、その余の乙号各証の成立は認める。
二 被告
1 乙第一ないし第五号証、第六号証の一・二、第七号証の一ないし四、第八号証の一ないし三、第九号証の一・二、第一〇号証の一ないし三、第一一・第一二号証の各一・二、第一三号証の一ないし五、第一四号証の一ないし三、第一五号証の一・二、第一六・第一七号証を提出。
2 証人太田武次郎の証言を授用。
3 甲号各証の成立を認める。
理由
一 請求原因1・2については当事者間に争いがない。
二 次に、本件土地が亡権右衛門から訴外会社に譲渡された時期について判断する。
いずれも成立に争いのない甲第四ないし第八号証(ただし、以上のうち後記措信できない部分を除く)、乙第一ないし第五号証、第六号証の一・二、第七・第八号証の各一ないし三、第九号証の一・二、第一〇号証の一ないし三、第一二号証の一・二、第一三号証の一ないし五、並びに、証人太田武次郎の証言を総合すると、次の事実が認められる。
亡権右衛門は、大阪市大正区南恩加島町に、本件土地を含む約六万坪の土地を所有していたが、右土地の一部約八〇〇〇坪が、昭和三二年一月二一日に、亡権右衛門の主宰し、同人及びその家族等所有不動産の管理運用を目的とする訴外会社に売渡されたことがあり、その際残余の土地についても同様の売買をすることが当事者間で検討されたものの、これについては売買が実現しないままに終つていた。
ところで、右南恩加島町の土地については、従前からその小作人との間で土地の権利関係をめぐつて紛争が継続してきており、昭和三五年には、右小作人ら五九名から、亡権右衛門を相手とする所有権移転登記手続請求の訴えが大阪地方裁判所に提起されるに至り、これに対し亡権右衛門は、本件土地の所有権を訴外会社に移転して右紛争の長期化に備えることなどの対応策の検討を試みていた。
また一方では、本件土地の維持、管理のあり方について、その所有権を訴外会社に移し、これを訴外会社において倉庫・モータープール営業所等に積極的に活用することにより収益の増大をはかるべきことなどが、亡権右衛門と訴外会社関係者との間で考慮されていた。
かような事情のもとに、昭和三八年暮ごろから、本件土地の訴外会社への譲渡の案件が具体化するに至り、亡権右衛門は昭和三九年一月二八日、原告雅信(訴外会社代表取締役)及び訴外会社営業部長西村伊三郎・同経理部長渡辺為二ら訴外会社関係者との会議の席において、訴外会社への譲渡の方針を決定し、同人らに代金額の決定等契約上の必要事項について差配するよう指示した。
しかるところ、亡権右衛門は、右方針に基づき書類作成等の準備を進めるうちに、右西村及び渡辺の発案により、本件土地の譲渡時期を前記約八〇〇〇坪の土地の売買のなされた昭和三二年にまで遡及させ、坪あたり単価を右売買のそれと同額とすることによつて、譲渡所得に対する所得税の負担を軽減しようと考えるに至つた。そして右構想に符合させるため、昭和三九年四・五月ごろ、前記西村・渡辺らをして、譲渡の日を昭和三二年五月二〇日とし、昭和三二年以降昭和三九年までの間に第三者に売却され既に亡権右衛門の所有を離れている二〇〇〇余坪の土地についても譲渡対象物件に含まれるものとして、合計五万二七七四坪について代金総額を八二八五万五一八〇円(坪あたり単価一五七〇円)とする同日付売買契約書、及び、訴外会社の取締役会において本件土地買受の決議をした旨の右同日付取締役会議事録その他の書類を事実に反して作成させ、これらに基づき、公証人に嘱託して、前同日付売買を証するものとして昭和三九年六月二三日付公正証書を作成させた。
以上のとおり認められ、前掲甲第四ないし第八号証並びに甲第九号証及び証人西村伊三郎の証言のうち、右認定に反する部分は、前掲各証拠に照らしてたやすく措信できず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。
右認定事実によれば、本件土地が訴外会社に譲渡された時期は昭和三九年であるといわなければならないから、原告らの譲渡時期に関する主張(請求原因3の(1)及び(2))は失当であり、亡権右衛門には昭和三九年に本件土地の譲渡所得が生ずるものというべきである。
三 そして、本件土地の譲渡所得の額が八億六二二四万八三六七円(総所得に算入されるのは四億三一一二万四一八三円)であり、その金額について確定申告がなかつたことは当事者間に争いがなく、前項認定の事実によれば、亡権右衛門は、本件土地の譲渡所得に関し、所得税の課税標準額の計算の基礎となるべき事実を隠ぺい・仮装し、その隠ぺい・仮装したところに基づいて確定申告をしたものと認めざるを得ない。
四 原告らは、本件修正申告は被告からの勧奨及び示唆によつてなされたものであり、亡権右衛門につき隠ぺい・仮装の事実はない旨主張するところ、右主張は、本件土地の譲渡所得が昭和三九年中に発生したものではないことを前提としている点ですでに失当であるが、この点をしばらく措くとしても、右主張に沿うかにみえる前掲甲第八号証及び証人西村伊三郎の証言は前提各証拠に対比して容易に措信できないし、甲第二号証の一、同号証の二の一・二、同号証の三も原告らの右主張を認めるに足らず、他に原告ら主張のような被告の勧奨あるいは示唆の事実を認めるべき証拠はない。
それゆえ、本件賦課処分が信義に反するとの原告らの主張も、また、失当である。
五 最後に、原告らは重加算税を認めた国税通則法第六八条の規定は憲法第三九条に違反すると主張するので、この点について判断するに、国税通則法第六八条の重加算税は、事実の隠ぺい又は仮装に基づく過少申告あるいは無申告による納税義務違反の発生を防止し、もつて申告納税の実を挙げるために、行政上の措置として、本来の租税に附加して租税の形式により賦課されるものであつて、脱税者の反社会的不正行為に対する制裁として科せられる刑罰とはその性質を異にするものと解すべきであるから、刑罰の外に重加算税を賦課しても憲法第三九条の一事不再理の原則に違反するものではないといわなければならない。
六 以上の事実によれば、亡権右衛門が本件土地の譲渡に関する事実を隠ぺい仮装のうえその譲渡所得八億六二二四万八三六七円(総所得に算入される金額は四億三一一二万四一八三円)を除外して確定申告をしたものと認めてした被告の本件重加算税賦課処分には、原告ら主張の如き違法の点はないので、本件賦課処分の取消を求める原告らの本訴請求は失当として棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九三条第一項本文を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 石川恭 裁判官 鴨井孝之 裁判官 大谷禎男)
第一表 調査税額の算出根拠
<省略>
注 修正申告分、配当所得のうち八七〇、七六三円は原告の妻木村きみのものであり、旧所得税法第十一条の三により資産所得を合算したものである。
第二表
加算税額の算出根拠
<省略>